俺は感じているのだが、キャットショーの会場には生温かい空気が流れている。何だか社会常識からはかけ離れて、素直に喜んだり笑ったりできないような、その反対にバカ笑いしたり大声で話していたり、新しい人だとチラリと様子を探るような、ギスギスした嫌なムードだ。

 勝っても負けても、猫が変わるわけじゃないのに、飼い主の目が血走っているよ。・・・まあ、目立っているのは一部の人だけどね。

  それでも、キャットショーは猫のオリンピックだなんて思っていたが、競争するだけでもない。スタンダードと云う、猫品種の評価基準の説明や、手入れについて、それに、捨て猫防止の問題まで、いろいろな話をしながら審査する。ファイナル表彰の前に、髭の審査員がメッセージしていた。              
  「猫と自然環境は非常に難しいテーマです。猫は自由に野外で遊ばせるべきだという人もいますが、現在では車の危険が一杯で、それに猫嫌いな人も大勢います。日本全国の動物保護センターには、毎日毎日、千匹以上の猫が収容されます。街角で拾われた猫、引越しで飼えなくなったからと捨てられた猫、生れたばかりで捨てられた赤ちゃん猫。・・・

 みんな、数日間の命です。せめて私たちは自分の猫に、飼うことの責任を持たなければいけません。また、家庭で栄養満点に育てられた猫は、家の出入りが自由で、もし、避妊も去勢もされていなければ、一年に何回も赤ちゃんを生みます。

 私たちCFAメンバーは、あらゆる猫の幸せを考えて、動物愛護について、ペットの飼育では先進国の欧米に学ぼうとしています。
 より多くの猫の飼い主が、自分の猫ちゃんに愛情を持って避妊去勢することが大切です」 

  そうかそうか、俺たち玉無し猫はアメリカナイズされていると言うわけなのだ。



次のページへ