汚れの世太郎「おいらは玉があるから、後先かまわず色気に迷わされて、つい頑張ってしまうのさ。これも本能とやらで仕方ないんだ。ところで、ツートン君の意見も聞きたいね、とりあえず玉抜きの手術について聞かせておくれ」

 何だか怪しい風向きになってきたが、俺はがんばってこたえようとするが、そんなことなど忘れちまっていた。

 「まだ小さかったせいか、手術のことは何にも覚えていないけれど、冬の寒空でメスを奪いあっている仲間の声を聞く度に、つくづく玉取りの手術をしてもらって良かったと思っているよ」 

 汚れの世太郎が疑心そうな目つきで、「ふーん、無くても困らないのかい。じゃあ、玉を付けてたらどんな得があるのかね。もっとも、生まれたときから付いているけれど、ただの一度だって玉があって良かった何て思ったこともないけどね」

 赤黒斑の柳腰「おやおや、お前さんほど無責任なのもいやしない・・・あっちこっちで種付けして、都合が悪けりゃ頭が痛いって隠れちまうんだからね」

 若後家の三毛「汚れの世太さんに玉のあるのがいけないんだろうさ・・・」

 真っ黒の元ボス猫「わしも真剣に考えたことは無いけれど、玉があったら子孫が増えて貫禄が付くんじゃないかな」 

 赤黒斑の柳腰「貫禄付けても、子猫が大きくなれば親も子もないだろうに、反対に餌場をめぐって縄張り争いが起こるよ」 

 飛び白茶斑の不良「母親なのはおっぱい飲ませているうちだけで、兄弟が仲良しなのはじゃれている頃だけだ。父親なんかは三日もしないで赤の他猫だ。なまじ肉親の愛情なんか考えずに、散り散りに離れた方が良いんだよ。」   

 若後家の三毛「その通りだよ。母親だって兄弟だって、あんまり関係ないからね」

次のページへ