だいぶ前に、使いをさせられたときも約束を守って大きいバッタを何匹も集めてくれた。でも首がぶらぶらなバッタ、足のもげたバッタ、そんなのばかりだった。

 バッタは捕まえたらいいってもんじゃ無いよ。特別のご褒美だと言って、尻尾の無いカナチョロもいたけれど、舌を出して往生していた。
 おまけに、丁寧に玄関前の階段に並べておいたから、俺がお嬢さんに説教されたんだ。

 バッパは「いくらお嬢さんでも、猫のことは猫じゃなければ分らない・・・」何てそらとぼけてたよ。




 本当は、いくら物知りの茶虎バッパでもバッタ遊びは知らないんだ。

 ショウリョウバッタは草と同じ緑色、一本角を突き出したような細長い三角頭、羽を広げたら空高く見えなくなるまで飛んで行く。

 一瞬の隙を狙って、そいつを捕まえたら前足で押え付けて、そっと手を広げて様子を見たときに、十秒じっと動かなければ俺のKO勝ち。すぐに動いたり飛んだりしたらバッタの勝ち。脚なんかがもげていたら俺の反則負けになる。

 この遊びには勝つか負けるかの美学があって、それが大事なんだ。

 バッタ遊びの中でもっと難しいのは、ショウリョウバッタの仲間にオンブバッタがいて、いつも大きいバッタが小さいバッタを背負っているから、それを離れないように二匹とも押え込むには熟練の技がいる。これは俺にしか出来ない秘伝の技なんだ。

 あれこれ愚図ついてると、茶虎バッパの雷が落ちた。 
 「嫌なら嫌とはっきり言っておくれ、まあ、お前に迷惑かけてまで長生きもしたく無いし、あちきはあんまし永くは無いよ」・・・いつもこれなんだ。

次号はツートン君が冒険の旅に出ます。お楽しみに・・・