茶トラバッパの物知りにはいつだって感心しているが、最近は同じ話を繰り返す事が多くなった。
でも「それ聞いたことがある」なんて言おうものなら、「えっ、そうだったかね、それじゃあお前に教えることは何にも無くなったね」と、とたんに不機嫌になる。
あくびをかみしめる振りをして、「子供だ子供だと思っていたのにお前も大人になったもんだ」と誉めてくれたかと思うとそうでもないようで、大げさなため息をつきながら「あ〜あ、あちきももうろくしちまった、いつお迎えが来ても安心して三途の川を渡れるさ」と毒づいて、とどのつまりはそっぽを向いて不貞寝するんだ。
ネコハエトリグモ……………、
海から吹いてくる風がだいぶ涼しくなってきた。遠くの空を見ると、ダルマさんが腕組した形の入道雲が海から沸きだしているのに、頭の上では、小魚の大群が泳いでいるようなうろこ雲が流れている。花壇には虫食いの葉が目立って、あんなに元気に咲いていたひまわりも立ち枯れて幽霊みたいに見える。
ミノ虫の家族を見付けた。葉っぱや茎にいっぱいぶら下がっている様子はいつかテレビで見たニユーギニアの土人部落のようだ。
ミノ虫はこぼれた花びらや枯れ草で小さなマユを作って、いつだって姿を見せないのに、秋に見るとき、冬に見るとき、段々大きくなっているのは、葉っぱを食べているからだと思うが、でも変だ、ミノの入り口は閉っているし、出たり入ったりすれば見逃すはずがない。
俺は気になると眠れなくなって、一生懸命に子供ミノ虫のマユを見続けていた。やっぱりそうだった。
日暮れて少し涼しくなったら、ヤドカリみたいに首だけ出した小さなミノ虫が、大きなミノを引きずりながら、ちょびちょび葉っぱを食べている。それにしても、大きなミノムシは腹が減らないのだろうか、ちっとも動いてくれない。
しばらくはミノ虫の研究に忙しくなりそうだ。
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