叱られている俺をからかうように目の前で小っちゃなクモが跳ねた。身体よりも大きな頭を持っているネコハエトリグモは、頭の後ろと背中に白い模様があって、良く見ると白い斑点もある。 口の脇の白と黒の触角をモジョモジョ動かして、触ってもいないのにピピッと素早く飛びのいて、顔を持ち上げると戦闘態勢になる。 これは、茶虎バッパには見せられない。虫の居所が悪いときに、「お前の前世はクモだった」と、もっともらしく言うのに決まっている。 俺は聞かない振りをしてごまかすけれど、きっと、クモに変身する夢を見るんだ。