それから、だいぶ日が過ぎた日曜日、うなだれた正一君がお母さんに連れられて、この家に謝りに来た。ニコニコ顔の健太も一緒だ。

  お母さんには、正一君の反省日記に子猫のことが書いてあったので分かったんだよ。

 そのとき、お母さんは、責任を取って引き取りますとお嬢さんに言ったけれど、他の子猫は他所に貰われてぼくしか残っていなかった。

  お嬢さんが「とても可愛くて手放せません」って、きっぱり断わったら、お母さんは少しほっとしていたそうだ。

  「もう絶対に猫を捨てません。それに、猫いじめもしない。

  猫の悪口も言わない」正一君はいっぱい考えていたことを一気に言って、ペコンと頭を下げて謝った。・・・けれど、不服そうな顔に“ボクは本当は拾って助けてあげたのに”と書いてあった。

  それから、お嬢さんの出してくれたケーキを頬張りながら、お前を抱っこさせてもらうと、その時ばかりはすっかりいじめっ子じゃなくなっていた。もっとも、それはおやつのときだけだったけれどね。

  「名前はツートンにしたのよ」
  お嬢さんが言ったら、健太が自分のジーンズで爪研ぎするお前をじっと見ていて、「ブンブンバエみたいだからハエちゃんがいいよ」と、自信たっぷりにあだ名をつけたのさ。

  お嬢さんが苦笑しても、正一君と健太は、「ハエちゃん良かったね。ハエちゃん良かったね」と合唱して、お前をでんぐり返して遊んでいた。

  「いつもは悪ガキでも、捨てられていた子猫の命が助かっから子供心にうれしかったんだよ。

  茶トラのバッパは、いろいろとぼくの生い立ちを教えてくれた。
 でも、帰り際に茶虎バッパを見付けると、ちょっと前に反省したのも忘れて、「ワン、ワン」って犬の鳴き真似でておどかしたて、苦笑したお母さんに頭を小突かれたそうだ。


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