キャットショー・・・・

 大好きな庭遊びが禁止になって数日後の日曜日・・・・

 朝早くから起こされたと思ったら、小さめのキャリバックに入れられて車に乗せられた。何でこんなに狭いところに押し込むんだとむくれたけれど、車は時々揺れるから俺にはちょっと窮屈なくらいが、あっちこっちぶつけなくて楽ちんだった。

  東京のキャットショー会場に着いて、受付で出陳料の九千円・・ ギョッ高すぎると思ったら、なんと、土曜と日曜の2日間参加する と1万七千円だと言う。

 どれだけフライドチキンが食べられるのだろう・・・お弁当引換券や参加賞を受け取っていると、お嬢さんのお友達が大げさな笑顔で両手を広げながら出迎えた。

 落ち着く間も無く、獣医さんの検診があった。「はーい、蚤無し、耳ダニ無し、皮膚病無し、向こう傷少し心配無し、ワクチンは済んでいますね。はーい、太り気味で合格」メガネの獣医さんは一つ一つ陽気に声を出してチェックする。「太り気味は余計だ。唸るぞ」と睨んでやった。

  そう言えば1ヶ月ほど前に、トレードマークの赤い首輪を外されて、獣医さんでお尻の穴に体温計を入れられたりして、健康診断を受けたことがある。あれから外には出ていないし、うかつにも、あれがショーの為だったと今になって気がついた。
                
  十時にスタートする予定が30分も遅くなって審査が始まった・・・

 直ぐに、俺の出陳ナンバーが呼ばれて審査台に向かった。何でも俺たち血統書の無い猫は家庭猫と呼ばれて、英語ではハウスホールペットだそうで、日本猫や混血猫、中にはれっきとした血統猫もいるが、みんな避妊去勢されているのだ。

  初めての体験なので、ちょっと緊張していたが、審査ケージの中ではふて腐れて寝そべってやった。あっと言う間に順番が回ってきて、ケージの中から引っ張り出されて、そして、消毒液の匂いがする審査台の上でごちょごちょっと触られて、また閉込められた。

  このクラスに参加した全部の猫に紅白のリボンが掛けられて、直ぐにファイナルになった。

 どれが優勝するか順位を決めるのだが、このオバちゃん審査員は、「本当は家庭猫に順位は付けたくないのですが、これも審査員の仕事ですから・・・」何やら言い訳じみたことばかりを言って、そのくせ、俺のことをチラッと見ただけで、「はい、このネコちゃんが3番です。おめでとうございます」と、事務的に大きなリボンをケージにかけた。 

  俺はコンテストだと言うから、ネズミのおもちゃ捕りの競争でもするのかと思っていたが、第一幕はあっけないものだった。迎えに来たお嬢さんの方がもっと緊張していたらしく、口がカラカラで声も出ないでいる様子だ。


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