真っ黒の元ボス猫が真面目な顔つきで、「わしらは好きでノラをしてるんじゃ無いけどよ、放っておいてくれりゃ、それなりに巧くやっていけるもんさ」と仕切りなおす。

 「ボスさんなら心配無かろうが、ひもじい思いするノラもいるんじゃないのかな?」 と、飛び白茶斑の不良猫は不満そうだが、元ボス猫は、「でもな、昔から餌場の大きさでノラの数が決っていたもんだ。

  魚屋のある横丁は二匹、あの公園は三匹、角のラーメン屋は一匹、そんなふうに縄張りがあって、少しずつ入れ替わりながら、何とかやっていけるんだ」と念を押す。


 「この頃、親切なおばあちゃんが餌を運んでくれるから、私はとっても楽してる。今まで年に一回だけ、それも二匹しか生めなかったのに、三か月前には四匹も生んだし、おっぱいも出たからみんな育ったよ」と若後家の三毛が続ける。

 すかさず、赤黒斑の柳腰猫がライバル心をむき出して、「お前さんはおき楽な身分だよ。あたしゃ相変わらず腹を減らしているから、この前生んだ二匹も育てられなかった。その前はやっと一匹立ちさせられると思ったら自動車とぶつかっちまってさ、・・・」と、ヒステリックに反論する。

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