汚れの世太郎が、「最近は右も左もコンクリートばかり、街も人の心も乾いちまってるのさ」と、したり顔をすると、飛び白茶斑の不良は、「人間様の会議とやらを床下で聞いたことがある。

  何たって、自分だけが猫の味方のつもりで、金切り声を上げて他人の意見を聞こうとしないからね、いつだって結論なんか出るもんじゃない」と、しのびの話を披露する。


 バッパ猫「まあ愚痴ばかりも言っちゃいられないけれど、猫は捨てられちまったら遺失物だからね。簡単に言えば落し物さ。さて、次の意見は誰だい」と、議事を進める。

 飛び白茶斑の不良が「わしのところは、最近、なかなか餌にありつけなくてファイトも無くなったけど、シャム猫が放し飼いされて好き放題に種付けしていやがる」といまいましそうに言う。

 真っ黒の元ボス猫「どこにもある話しだ。飼い主はオス猫だから子猫は生まないって安心しているから始末に悪い。以前に、放し飼いの日本猫が俺の縄張りで勝手な真似しやがるんで大怪我させたら、飼い主に追い掛け回されたことがある」

 若後家の三毛「前に聞いたことがあるけれど、ノラ犬は登録制度が出来て街から姿を消したんでしょう。ノラ犬減らしには抜群の効果が有ったことは確かよね」

 飛び白茶斑の不良「ますますお気楽の甘ちゃんだよ、飼い猫に登録を・・なんて言い出そうものなら、おばさんパワーが爆発して、天地がひっくり返るような騒動になることは、火を見るより明らかってもんだ」

 「だって、私たちは今のままでも我慢できるけど、孫の孫までノラなんて………、」と、若後家の三毛が泣きべそをかくものだから、汚れ白猫の世太郎が「捨てたお人をうらむじゃないが、捨てられたおいらが何したの、・・・」とおどけて見せたが、ますます気まずい空気が流れると、バッパ猫は、「そうだね、ノラが減っても次から次に飼い猫が捨てられるからね」と、とりなす。

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