俺もここらで何か言おうと思い「動物管理センターって聞いたことがある?」と切り出したが、みんなにジロリとにらまれて、何だか重苦しい雰囲気になる。どうやら動物管理センターはノラ猫には鬼門のようだ。

 まあまあと諭すように、真っ黒の元ボス猫が「若いってのは怖さ知らずだ。日本全国といっても、毎日毎日、1000匹以上の猫が管理センターに収容されるんだから、理屈や行政でどうなるもんじゃ無い。

 わしは妙な縁で捕獲員のおじさんと仲良しだけど、ここで働く人はみんな動物が大好きなんだ。それに、犬と猫では、人に与える危害には雲泥の差が有るし、猫は捕獲の対象では無いらしい………、

 でも、誰かが勝手な理由を言って、ここに猫を運んだら、みんな怯えながら死ぬのを待つだけさ」 


 赤黒斑の柳腰は「子猫のときは可愛い可愛いって喜ばれるけれど、なんで、大きくなったら手のひらを返すように憎まれるのかね。

 人間様のご都合で、自分の赤ちゃんが生れるからとか、引越しするからって、簡単にポイと捨てっちまうのさ。一寸の間だけでも飼ってくれてありがとうって皮肉の一つも言ってやろうかね」と投げやりに言う。


 若後家の三毛も同調して「私が捨てられたときは、生き地獄だった よ」と身をすくませると、飛び斑点の不良が「そいつはみんな同じ思いをしているよ。運の強いやつだけが生き残るんだ」と答え返す。

  みんなつらい浮世を思い出して黙ってしまう。


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