冒険(そのニ) 海辺の山下公園…………  

 公園中央の入り口付近はあいかわらずにぎやかで、この暑い中をラーメンやおでんの屋台がならび、その側ではストリート・ロックンローラが大音響のラジカセに合わせて、腰をくねらせ汗だくで踊っている。

 俺は木陰伝いに“赤い靴”の少女の像に向かった。かわいい少女の像の側で、家族連れや恋人同士が思い思いに記念撮影をしている。
お母さんと手を繋いだ小さな女の子が俺の好きな唄を歌ってくれた。   
 
 ♪♪“赤い靴、履いてた女の子、
 ♪異人さんに連れられて行っちゃった。
 ♪横浜の波止場から、船に乗って、
 ♪異人さんの国へ行っちゃった。・・・”♪♪


 この場所は忘れてはいけない特別な場所なんだ。俺は小さい頃にここに捨てられてミィーミィー泣いていたんだ・・・だれが捨てたのかな・・・ 

 アイスクリーム売りのおじさんが自転車を止めて、くたびれた暑苦しい声で「冷たいよう、甘いよう、アイスクリームだよ」なんてひょうきんな声を出してチリンチリリンと鐘を振っている。

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