中央の桟橋には、レストランになった氷川丸や納涼船が停泊している。外れの大桟橋には、真っ白な船体にブルーとイエローのダイナミックなラインの描かれた豪華客船が停泊している。俺も一度は世界を旅したいものだ。

 「あの船の旗はユニオンジャックだからイギリスの船だ、大きさは鯨の百倍くらいあるのかな、いや、もっと大きいのかな・・・」

 「下りてきた水夫さんたちが見学者の記念撮影に付き合わされている」茶虎バッパへのみやげ話に、一つ一つ覚えながら公園を見まわる。

 真上に昇った太陽が照りつけて波止場のコンクリートは燃えるように熱い。それなのに近くのベンチではサングラスの男の子が日焼けした体をもっと焦がそうと寝転んでいる。

  安上がりにダンディになるのには苦労がいるんだ。

  花壇の回りの日陰になった四角いベンチでは、カップルがいちゃついたり、会社の仲間同士はおしゃべりしている。芝生の上でも、若い女性の膝枕で男の人が寝転んでる。熱い熱い、なぜかアベックばかり目立つ。

 そうだ、茶虎バッパの古巣を見なければいけない。道路際にある煉瓦タイルの公衆トイレ、その脇の配電室との間の狭い芝生だが、少しハゲ土が目立つが………、変わり無し。

 なるほど、この場所なら人も来ないし、ノラには都合が良かったのだろう。

 あっハトだ、茶トラバッパの教えてくれた。カラスよりも大きなカモメは夏にはいなくなるけれど、ここにはいつでもハトが一杯いる。キョトキョトしているからちょっとからかってやろうと、頭を低くして狙いを定めてお尻をフリフリしたら、「ダメッ」って小さな女の子に叱られた。

  俺はハトと遊びたかっただけなのに、女の子がゲンコツを振り上げて俺を睨んでいるから、クワバラ、クワバラと逃げ出した。

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