夏の通り雨はどしゃ降りになって、あっという間に上がった。
 
二十分も走ると古い旅館のような二階家屋に着いた。

 裏玄関からクロちゃんの部屋に入いると、短尾の三毛猫ミッちゃんと西洋気取りのグレーの毛色のオス猫グレ太がいて、いずれも俺と一緒で避妊と去勢組だ。

 
俺は一宿一飯の居候につき、野良猫仁義の薮睨みで、尾っぽを上げて仁義を切って見せた。

 グレ太は俺より二回りも小さいくせに、半眠りのふて腐れで応酬してきた。

 ミツちゃんは男同士の見栄には関係ないわと、クロちゃんの足の纏わり付いて食事の催促をしている。俺も腹ペコだ。

 
クロちゃんはおおきなバケツに、缶詰、ドライフード、乾いた食パン、湯通しした千切りキャベツ、それにビタミンとカルシュームの粉末ミックスを振りかけて、てきぱきと猫たちの餌を作る。俺たちの餌を三つの皿に盛って床に置いてくれた。


 それからバケツを持ってひまわりの咲く庭に出ると、竹囲いの隙間のあちこちから野良たちが顔を出した。    

 
ずんぐりむっくりのポン太、何でも慎重なコマ太、恥ずかしがりのテレ太、年中腹の具合が悪いモレ太、根性ありのゴン太、、最後まで隠れていたドロ太。

 
「こいつらチームを組んでるな」危うきには近寄らないのがバッパの教え、野良猫仁義の面子を通すのは止めた。にじり足で後ろに下がって、ちょっと安全距離を置いたが、よそ者の俺の顔を見てもやつらは知らん顔で食事している。


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